女子校と男子校の本質 Part 2|学校のおすすめ

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女子校と男子校の本質 Part 2

女子校と男子校の本質 Part 2

女子校と男子校の本質 Part 2

八雲学園の横山先生と聖学院の平方先生のクロストークによって、女子校と男子校の教育の違いは、リーダーシップ観で如実に表れてきます。キーワードは「存在の雰囲気」、「優れたロールモデル」です。

*写真は 聖学院の校務部長 平方邦行先生

Part 2  女子校と男子校 それぞれの教育の肝


本間 男子と女子の成長には違いがあるということはよくわかりました。それでは、その差異に応じた具体的な教育ということについてコメントをいただきたいのですが。
 

平方先生 何度も語ることになりますが、クラブ活動、イベントの立案と運営を男子だけで行うというのが大切な具体的な教育なのです。自分の力を素直に出し切らないと、自分の限界がわからない。限界がわかれば、次に何についてチャレンジすればよいかがわかるのです。思春期の時期に女子が近くにいたら、その存在が気になるのは自然の掟です。これはタブー視してはいけないでしょう。
 

横山先生 それは女子校でも全く同じです。八雲学園の卒業生はよく遊びにやってきますが、そのときにこんな話題がよくでます。共学校から大学にはいってきた学生は、イベントやゼミの準備をするとき、主体的に動かない場合がある、だから調子が合わないときがあるんですと。おそらく男の子がなんでもやってくれてきたのでしょうね。女子校はなんでも自分たちでやるしかないですからね。
 

本間 女子校そして男子校というスタイルそのものが、自分を見つめるチャンスとしての教育システムそのものだというわけですね。共学校は男女の関係を自然の掟に従わせるのではなく、プログラムとして人間関係を捉えかえす仕掛けを挿入しておかないと、草食系男子とか肉食系女子だとかいうようなマスコミの扇動に対抗できない。けっこう怖い話ですね。
 

平方先生 それは男子校にも似たような話があるわけですよ。1人苦悩する時期が高校になってやってくるわけですから、そこを切り取ってオタク文化をつくっているなどと揶揄されたりもするのです。自分の道を求めて迷い、殻にこもる時期を、その生徒とつかず離れずいっしょにいながら、待ち続けるという教師の姿勢は、崇高なことなのにですよ。
 




横山先生 
女子校にも見逃してはならない教育システムがあります。6年間一貫の女子教育は、ある意味生徒にとってはシェルターだったり守られている場所です。大学そして社会に出たとき、学園生活では見たこともないような男女の格差や女性に対する壁があります。このことを6年間の中でリアルに認識し、乗り越える準備をするのが女子校の独特の教育システムですね。
 

本間 両方とも、体験を大事にしている学校なのですが、実は体験から得られるものだけではなく、その前の準備というか仮説というかそのシステムが実によく考えられているということでしょうか。
 

横山先生 そうだと思います。体験の前にいろいろ準備するのです。同じ体験をしても感じ方は違うし、何も気づかない人もいるでしょう。でも準備をすることによって、感じ方がより深くなったり、多くのことに気づくということがあるのです。
 




平方先生
 体験は目に見えるだけに、見えないことは見失われるというのはよくいわれるけれど、それはそうですね。だからふだん見えることは、鵜呑みにしてしまう習性があるんですよ。男女の人間関係にしても、職業観にしても、マスメディアの流行などというのも、見えることや受動的に入手できる情報がすべてだと勘違いしてしまう。そこを鵜呑みにしないで、自分なりの内面の五感で感じ取ることが大事だけれど、それには時に雑音は遮断しなければならない。道を行くとはそういうストイックさも必要なのです。
 

横山先生 目に見えることと見えないことのバランスは難しいけれど、その微妙な差異を身にしみてわかるプログラムが、青春期では必要ですね。この差が葛藤を生むことにもなるし、それを乗り越えた時、社会に出ても通用する強さを得ることができると思っています。
 

本間 それはどういうことですか。
 

横山先生 八雲学園は、いろいろな委員会があるので、委員のリーダーになるチャンスが多くの生徒に開かれています。部活も多いし、イベントも多い。そのたびにいろいろな生徒がリーダーになるわけです。
 

平方先生 入学したばかりの時は、小学校の時のリーダー観でいるから、ぶつかるということでしょう。わかるなあ。
 

横山先生 そうです。ところが、リーダーというのはどうも指図したり命令したりするわけでもないし、支えられるという存在とも微妙に違うということに、活動を通して気づくのです。
 

本間 リーダーの活動の見える部分と見えない部分の微妙なGAPに気づくのですね。
 

平方先生 なるほど。そして高校になったら、そういうトラブルはなくなると。でも支えられる存在であると気づくだけでも、相当いいじゃないかと思いますよ。そこは男子校でも同じだけれど、それ以上のリーダー観というのは、どういうことかなぁ。それは女子校というより八雲学園の独自の文化から影響されてでてきたリーダー観なのではないかなと思いますね。
 

本間 たしかに興味深いですね。そのリーダー観というのはどのようなものなのですか。
 

横山先生 それはですね、「存在の雰囲気」なのです。多くの人間に良き影響を与える雰囲気を持っているリーダーということです。その雰囲気に触れると、まわりの人々は、明るくなったり、支え合いたくなったり、やる気がでたり、勇気や自信が持てたりするそういう雰囲気を持ったリーダーです。
 

本間 影響を与えるというのではなく、雰囲気を持つということですか。
 

横山先生 そこですね。影響を与えるというのは直線的なイメージだし、ともすれば押し付けというイメージにもなるでしょう。そうではなくて、いるというだけで雰囲気があるんですよ。そういう魅力的なリーダー観なのですが、これはたしかに八雲学園の文化かな。
 

本間 その文化はどこから来ているのですか。
 

横山先生 もちろん建学者の精神という伝統ですよ。近藤家の精神ですね(笑み)。
 

本間 ある意味近藤教という宗教性を感じてしまいます(笑み)が、そういう意味では聖学院もキリスト教精神に基づいていますね。
 



聖学院の正面から上ったところにある
光と水と風が響き合う広場。生徒に最も人気のある場所。
彫刻は、平方先生作。


平方先生
 だから他者に奉仕するのがリーダーだということになります。これは中1のオリエンテーションから身にしみて生徒は分かっていますが、農村体験とかではますますその理解が深まります。食糧生産の現場で、農村の人と触れ合いながら、食糧危機という世界問題を担って日々格闘している姿を見るわけです。朝散歩したら声をかけられ、夜近所の人がきて話してくれるわけです。人の優しさと辛さとたくましさを身にしみてわかるわけです。そして男子の特徴は、ロールモデルを見出すことですね。感動した人との出会いが、その人個人ではなく、その人の背景の大きさを感じ、それをロールモデルにするわけです。
 

女子校と男子校に対する先入観を払拭する


本間
 自らが存在の雰囲気を漂わせるというリーダー観。他者に奉仕するリーダーとしてのロールモデルを見出し、自分自身の生き方を重ねていく・・・。たいへん難しい話ですが、同時にたいへん重要な話です。理想的な女性観と男性観に行きついたような気がします。しかし、残念なことに、一方で世間は、女子校や男子校に対する先入観を持っていると思いますが、だいぶ理想とはかけ離れているのではないかと思いますが。
 

平方先生 しかたがない面もあります。学校選択の影響力は父親より母親が持っていますが、その母親は、男子校の経験がないわけです。男子校のイメージを学園ドラマなどから得るとしたら、もしかしたら期待がもてるかもしれませんが、多くの場合、そんな美しい男子校のイメージは持っていないでしょう。男子校というと体育会系のイメージだったり、縦社会の圧力のイメージを持っている可能性が高いのですね。
 

横山先生 女子校の場合だと、まだまだ良妻賢母のイメージや規律が厳しいというイメージを持っているお母さんもいます。ご自身が女子校出身の場合、まずは母校へと思うのは当然ですね。しかし、いくつか女子校を回ってみて、時代の違いを感じることも多いと思います。そのGAPを解消するために、時代が変わったのだから共学校へと、女子校の新しい画期的な面を見ないで、シフトしてしまう方もいると思います。
 

本間 その画期的な面とはどういうことですか。
 



   八雲学園の教育の4つの特色 「英語教育」「進路指導」「芸術鑑賞」「チューター方式」
   大学受験勉強を超える英語教育、飛躍する進路指導、豊かな教養を育てる芸術鑑賞、
   生徒1人ひとりの才能を引き出し、「存在の雰囲気」を生みだすチューター方式。

横山先生
 女子のキャリアデザインは、実際にはまだまだ社会では実現を阻む壁がいっぱいあるわけです。教養は良妻賢母のためだけではなく、世界で活躍する場合に必要です。ですから八雲学園は芸術鑑賞の機会が異様に多いのです。また英語は、世界標準のモノサシを身につけるためにこそ必要ですね。世界で活躍できる技術や才能を習得する特別なプログラムは、共学校では難しいでしょう。
 

平方先生 そうだと思いますね。共学というあり方は、多くの場合、社会の経済ニーズに合わせて運営されている。この場合の社会とは日本社会です。そうすると世界標準の知は必要がない。東大を頂点とする日本社会の中でサバイバルできる技術や才能を引き出すことが本位になるのはやむを得ないでしょう。
 

本間 女子校及び男子校は世界標準のモノサシに合わせたプログラムがあるということですか。
 




横山先生 
そういうことだと思います。同じ海外研修や留学でも、八雲学園の場合は、クオリティがかなり違います。カリフォルニア州サンタバーバラにあるケイトスクールと姉妹校ですが、この学校は全米でも相当エクセレントな私立学校です。そういう学校と連携しようというこだわりは女子校独特の感覚だと思います。内面のエスタブリッシュにこだわるわけです。
 

平方先生 聖学院の場合は、オーストラリアのクイーンズランド大学(UQ)と指定校推薦制度の提携をしています。2008年のデータでは、世界ランキングはかなり高いですね。東大が19位、京大が25位、大阪大学が44位、東工大が61位と続いている中で、UQは43位です。日本の大学進学システムは世界の大学進路システムとは違います。システムが違えば、重視される才能も違います。日本のシステムに適合する才能とそうでない才能があるのです。生徒1人ひとりの才能を引き出すのは大事ですが、引き出した後、その才能を生かせる進路先の情報収集をグローバルに支援するというのは男子校の独特の感覚です。
 

本間 出口戦略がドメスティックではないということですね。共学校が女子校や男子校のような努力をしていないというのではなく、1人ひとりの才能がわりとステレオタイプで割り切れる場合が多いということでしょうね。逆に、シングルスクールのように自分の道をとことん追究していくと、才能のステレオタイプが壊れるということでしょうね。シングルスクールを選択する時点で、社会の流れとは違う文化を受け入れるという覚悟と自負があるから、当然といえば当然かもしれませんが。
 




平方先生
 そうはいっても、選択の段階で、そのステレオタイプが壊れるということに不安を感じるのかもしれませんね。
 

横山先生 それは女子校でも同じです。ですからチューター制度というとことん対話するシステムを実行しています。とにかく互いに助け合うということが大事だという実感を抱けるようにコミュニケーションを密にとっています。このコミュニケーションによって、不安は解消されていると思います。
 

平方先生 独立独歩というのが男子の特徴でもあるので、そこは女子校のようにはうまくいかないかもしれない。
 

本間 女子校の場合は、生徒の不安を解消するコミュニケーションが特徴的なのですね。一方男子校の場合は、息子が自分の手から離れていく母親の不安を解消するためのコミュニケーションが重要だということでしょうか。
 

平方先生 しかし、息子が自分の手から離れても、いつも見守っている母親の姿に気づいて感謝できる男子が育つのは男子校ならではの伝統ではないでしょうか。これはあくまで経験上の話ですが。
 

横山先生 男子校出身者としては、よくわかります。女子校の場合は、少し状況が違います。娘と母親は仲が良いのです。理想のロールモデルに向かって進路を決めるというより、友だちや親と話し合いながら、自分の役割を感じとるという場合が多いかもしれません。だから質感の高い環境を用意することが大切ですね。その環境の中で、話し合いが行われるわけですから、いま・ここでの話題から気づいたことを話し合うことになります。多くの気づきが生まれる環境を女子校が設定するのはそういう理由からでしょう。
 

本間 男子には優れたロールモデルが必要で、女子には雰囲気を共有することが必要だというお話は一貫していますね。まだまだお聞きしたいことがありますが、女子校と男子校の本質は、結局女子と男子の成長における大きな違いを平等という名で平均化するのではなく、むしろその成長の違いを明確にすることであるということがわかりました。そして、この違いをとことん追究していくことが成長の飛躍をつくりだすということも。この飛躍はおそらく違いを統合するステージを用意するでしょう。女子校と男子校の本質は、多様化して混迷している現代社会に対し、新しい社会のあり方を提案するヒントがあるかもしれません。次のチャンスで、男子校と女子校の本質が社会に与えるインパクトについてお聞きしたいと思います。本当に貴重なお話ありがとうございました。

文☆本間 勇人  取材日:2009年5月26取材 場所:八雲学園 応接室

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