松田孝志先生 Part 2
◇松田先生の新しい授業。それは覚えるための知識を伝達する授業とはひと味違います。それどころか、授業で扱われる知識の量は、通常よりも多いかもしれません。
◇中3の公民の授業で、地球環境問題の背景になっているものを認識することと現状の対策について自分の意見を論文にするわけですが、ここに至る過程は、
1)講義
2)問いかけ
3)ディスカッション
4)論文
5)発表
◇3回から4回の授業で、目的は達成されるのですが、1)の講義が実に濃いし、そこで出てきた知識を2)の問いかけと3)のディスカッションの過程で、生徒たちが使うように仕掛けられています。知識を使うというのが授業の中に取り込まれているのです。

◇講義は、パワーポイントで行われます。生徒は板書する必要はないのです。というかそんな暇はありません。とにかくよく聞いておかねばならないのです。パワーポイントの内容そのものは、配布用が用意されているので、板書の必要はないのです。
◇なにせ環境問題にいたる過程は16世紀の啓蒙期社会からはじまります。「知は力なり」というベーコンの言葉が象徴している自然観の大転換、産業革命の大衝撃、市場経済の誕生の話などダイナミックです。近代化の光と影の矛盾の話がドーットでてきます。
◇講義は速いし、歴史スペクタクルは壮大、マインドマップも活用します。ついていけなくなると、心地よい時間を迎える生徒もいますが、それも一瞬。突然、問いが投げられます。資料集から2つのグラフをピックアップし、それから何が読めるか?1つは世界の人口爆発推移グラフ。もう一つは化石燃料使用料の推移グラフ。知の再構造化が始まります。東大の二次試験の地理で出題されるより難しいかもしれません。
◇心地よい時間を迎えていた生徒もムックリ起き上がり、今度は目が輝きます。そしていよいよディスカッション(ディスカッションの中でついてこれなかったところが修復するのがおもしろいですね)。ただし、いきなりディスカッションではないのです。自問自答用のシートがあって、ディスカッションの前に多角的に考えられる準備を仕掛けています。このように拡散と集中のダイナミズムが、新しい授業の特徴です。直線的な展開ではないので、聞き逃したことも、再度確認できるようになっているわけです。
◇このように、知識は知を再構造化するために活用するわけです。この再構造化は、自問自答という集中とディスカッションという多角的な見方をぶつける拡散の両ベクトルによって合成されます。
◇自問自答とディスカッションの過程で、松田先生はファシリテーターだったり、対等に議論に加わったりします。これも再構造化を促進させます。
◇ロサンゼルスの全米でも相当エクセレントなプレップスクール「チャドウィックスクール」のプロジェクト・ベース授業と同じ質感を感じます。しかし、多くの教師は、松田先生の授業の質感を世界標準以上であるとまではみなさないでしょう。しかし、本物はとがっているのです。突き抜けているのです。本物志向の教師どうしだけが共鳴できる授業の質感というのは、こういうものなのですね。
◇そんな情報をおせっかいにも提供しても、当の松田先生は、目を細めて「ありがとう」としか回答しません。先生にとっては、世界標準を超えるすごい授業であれば、それにこしたことはないでしょうが、生徒1人ひとりの反応こそ重要で、反応のない授業はどんなに素晴らしいと言われようと納得しないのです。
文☆本間 勇人 2009年4月27日
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